断熱,気密、そして湿度・11

前回、昔の家は、家全体の壁に『土』を用いて『多湿』の『多』、多すぎて不快になる湿気を壁の土に吸わせたり、放出させたりという 『調湿作用』を持たせ、風通しを良くして蒸し暑い夏を過ごしていた、という事をお伝えしました。となれば、現在に於いても『土壁の家』を建てるべきなのか…といいますと、それは正解と言う訳にはいきません。

『土壁の家』は、『調湿作用』という観点で考えれば日本の気候風土に適していますが、『断熱・気密』に対しては、まるでお話にならず、工期もコストもかかり、現在の家造りに適しているとは言えないと思います。となれば、どのような家を造れば最善の選択と言えるのか…。その答えは、『断熱』も『気密』も優れ、『透湿』と『調湿』が機械の力に頼ることなく、自然に行うことが出来る素材を使って家造りをするという事です。

具体的に言いますと、断熱材は、新聞から造った『セルロースファイバー』を使用する事です。綿状態ですが湿気を吸わない『グラスウール』と『ロックウール』。いくらかは湿気を吸うであろう『サーモウール』。まるで吸わない『ウレタンボード』や『ポリスチレンフォーム』等では『調湿作用』は期待できません。気密は、以前お伝えしたように施工すれば万全です。

セルロースファイバーは約30坪の家で、およそ1500キログラムも使用します。『珪藻土 は調湿作用がある』という事は間違いではありませんが、所詮内装の仕上げ材として使用する程度です。一部屋およそ20平方メートルの壁を全て珪藻土の塗り壁で仕上げたとしても、使用する珪藻土はおよそ6袋,重さにすれば約15キログラムです。

約30坪の家の天井と壁の合計が、仮に350平方メートルあったとして、それを全て珪藻土で仕上げたと仮定しても、使用する珪藻土の総重量はおよそ250キログラムです。一棟分で使用するセルロースファイバーの重量の1500キログラムと比較すれば6分の1の重さでしかありません。『セルロースファイバー』と『珪藻土』。双方の重量による吸湿量は調べていませんが、珪藻土の6倍もの重量を一番湿気を吸って欲しい外壁に面した壁に『パンパン』になるまで吹き込む事と、『しんしん』と深夜に降り積もる『雪』の様に屋根裏に吹き積もらせた『セルロースファイバー』が、土壁よりも,さらにどの吸湿材よりも『湿気を吸い、また、放出してくれる』という『調湿作用』を持っている事は間違いないはずです。

昔の自然素材でできた家は、屋内の壁が『土』や『漆喰』で仕上げてあり、その壁がそのまま屋外の壁と一体物であるために,屋内で吸い取った『湿気』は、天気の良い日には屋外に放出してくれます。大切な事は、現在の家造りもこの『湿気の流れ』を断ってはならないという事です。セルロースファイバーが入っている屋外に接した壁や天井は、無垢の板張りや漆喰、珪藻土等で仕上げ、屋内、屋外共に『透湿』が可能な素材を使用して、湿気を屋外に放出できるようにする事が必須条件なのです。

目で確認できる内装は、仕上げの時に選択することが出来ますが、外壁材などの下に隠れてしまう『構造用耐力面材』は、必ず『ダイライト』や『ハイベストウッド』などを使用しなければなりません。間違っても『針葉樹合板』や木片を押し固めたような『OSB合板』を使用してはいけないのです。『OSB合板』と透湿性のある『構造用耐力面材』の『透湿抵抗値』は、大建工業の『ダイライト』が7~10倍、ノダの『ハイベストウッド』がおよそ6倍もあり、湿気を通しやすい素材であることが解っていただけます。

壁や天井の僅かな隙間や『防湿ボックス』を入れても完全に防湿することが出来ない電気スイッチやコンセントプレートから、断熱材が入っている外部に面した壁の中に入り込んだ湿気は、透湿することが出来ない素材に取り囲まれて外に出ることが出来ません。この壁の中に取り残された湿気が壁内でどのような事になるか…?。おそらく『カビ』や『ダニ』の発生を助長し、木材を腐らせる『腐朽菌の発生』をも助長することであろうと思います。高温・多湿の気候風土の中で過ごしやすい家を造るには『透湿出来るという事と調湿出来るという事』がどんなに大切か…という事がご理解いただけた事と思います。

今日で、『断熱,気密、そして湿度』は終了です。

 

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