愚かな『防湿ビニール張り』が家を腐らせる・2
読んで字の如く『防湿ビニールシート』は、湿気を含んだ空気が壁内に移動する事を防ぐ事が目的で、屋外に面した柱の内部側に張る石膏ボードの裏に当たる所に張ります。屋内の温かく多くの湿気を多く含んだ空気が壁の中に入ってしまうと、壁の中の冷たい空気によって冷やされた物に触れて『結露』が発生します。この『壁内結露』を防ぐには『ビニールのバリア』を先ほど説明をしました所に張りさえすれば、『湿気を持った空気が移動しないので結露は発生しない』という、実に浅はかで愚かな考えで施工要領を決めてしまったようです。
建築の現場を知らない国土交通省のお役人様達は仕方がないとしても、日々、住宅を施工している住宅会社がこの施工要領を見て、何の疑問も持たず、何も考えずに仕様書通りに施工している事が私には理解出来ません。
ものすごく小さい水蒸気の粒子が通り抜けないように柱や間柱に防湿シートを張り付けることなど100パーセント不可能です。それは何故か…?.柱などにシートを張るには『タッカー』と言うホチキスのような門型になった球を直接打ち付けます。屋外に張る『透湿防水シート』も同じ要領で張ります。
屋外のシートをタッカーで留めた後に雨に当たると『タッカー』の玉の所から極僅かですが水がにじみます。水の粒子よりもはるかに小さい水蒸気の粒子は無数に留められたタッカーの玉脚からいくらでも入ることが出来るのです。他にも電気ボックス用の防湿カバーを取り付けたとしても、防湿カバーに上からも下からも何本もの電線を入れたり、蛇腹状のCD菅を入れたりする事は良くありますので、防湿カバーからは『通行制限』もなしに水蒸気を多く含んだ空気が壁の中に入っていきます。
入っていった水蒸気を多く含んだ空気が冷たいものに触れ、壁内結露が発生し、『水滴』になってしまったら室内側の壁には防湿バリアである『ビニール』が張ってありますので元に戻ることは出来ません。筋交い工法の家でしたら気密が取れていないので、壁内に残った水分も次第になくなってしまうかもしれません。
気密が悪い住宅では内部の石膏ボードの裏まで冷気が到達しているとお伝えしました。と言う事は、屋内側から防湿ビニールを通過して壁の中に入った空気が問題というより、石膏ボードの裏に結露が発生してしまうという事の方が問題なのです。
石膏ボードの裏に結露が発生しますと、ボード裏のすぐ外側には、湿気を通せんぼする目的で張られた防湿バリアーのビニールシートが張ってあり、屋内側は湿気を通さないビニールクロスが張ってあります。この事こそ『防湿ビニールシート』を張る最大の致命的な欠点です。石膏ボード裏で発生する結露は、ガラスに付く結露と違って『水滴』になることはないと思いますが、ボードの裏はかなりの高湿度状態になると思います。
ボードの裏や壁の中が高湿度状態になるとどの様な事が起きるのか…?。カビやダニの発生が増え、木材を腐らせる『腐朽菌』の発生を助長する等、決して好ましい状態になることはありません。この事に焦点を当てて考えてみても壁は、屋内にも、屋外にも湿気を通してくれて、湿気が壁内にとどまる事がない『透湿性能』を持った素材を使用する事がいかに大切であるか…という事がお分かり頂ける事と思います。
次は、現在のゼロエネルギー住宅、(ZEH) 基準が『絵にかいた餅』である、と言う事について書きたいと思います。