愚かな『防湿ビニール張り』が家を腐らせる・1
屋外と屋内の温度差。気温ベースで言えば、夏の外気温が『35度』であった時、エアコンで屋内を『28度』に冷房したとすると、その温度差は『7度』になります。冬の外気温が『5度』であった時、ヒーターで屋内を『22度』に暖房すると、温度差は『17度』にもなります。夏と冬、意外に気が付かない所ですが、冬の方が2倍以上冷暖房の負荷がかかるのです。今回は、屋外と冷暖房した屋内の温度差の大きい冬について書いてみたいと思います。
この外気温と屋内の温度差を僅か10数センチの厚さの壁内で対処している訳ですが、筋交い工法を採用している場合、構造用耐力面材は張りませんので、気密が取れない『透湿・防水シート』を張っただけで外壁の下地工事が終わりになります。この様な家を例に挙げて、冬に『17度』の温度差が発生した時に予想される事を書きます。
筋交い工法の外壁下地の最終工事である『透湿防水シート』から105ミリ~120ミリ程屋内側に向かった所、いわゆる屋内の柱面にクロスなどの仕上げ材を貼る厚さ12、5ミリの『石膏ボード』を張ります。そのボードを張る前に『防湿』する事が目的だろうと思いますが、結構厚手の『防湿ビニールシート』を張るという、私から言わせれば実に『愚かな』工事を、これもまた、実に多くの住宅会社が施工要領に指定されているからと『深く考える事もなく』施工しています。
気密を取ることが出来ない『透湿・防水シート』から侵入した『冷気』は、『断熱欠損』がある綿状の断熱材の欠損部分から壁内、及び、柱に張られた『防湿ビニール』にまで到達します…。と言う事は、ほぼ外気温である『5度』に近い温度の冷気が『防湿ビニールシート』の所まで到達していることになります。
厚さ12、5ミリの石膏ボード1枚で『17度』の温度差はさすがに防ぎきれず、『夏に氷をいっぱい入れたジュースのガラスコップの表面にあっという間についてしまう水滴』のように、石膏ボードの裏に結露が発生してしまいます。『結露』は、水蒸気を多く含んだ暖かい空気が冷たい物に触れた時、暖かい空気に含まれる水蒸気を保てなくなって水滴となってしまうという現象です。
国土交通省のお偉いお役人様達が決めた実に短絡的な考えであると思いますが、温かく水蒸気を多く含んだ室内の空気が、『ビニールのバリア』を室内側に張る事によって、冷たい外気が存在する壁の中に入る事を防いでくれる…、屋内の暖かい空気が壁内の冷たい空気に直接触れさえしなければ壁内結露は発生しない…、。このような下りでしょうか…?。そんな、ば、馬鹿な……。
例え、『防湿ビニール』を水槽に水を溜められるほどまでに『完璧』に張れたとしても『防湿ビニール』そのものは『断熱』をしてくれません。以前『気密』のところで書きました、夏野菜を冬に栽培するための『農業のビニールハウス』を思い浮かべてみてください…。ビニール1枚で空気を遮断することが出来ても断熱は全くと言って良い程してくはれません。『防湿ビニール』をほぼ素通りした外気に近い冷気が石膏ボードの裏まで到達していることがご理解いただける事と思います。
そもそも『防湿ビニール』を水槽に水を溜められるほど完璧に張ることは『不可能』なのです。長くなりますので、続きは次回で…。